裏街道の危険
相変わらず世の中は、落ち着きがない。トラブルは
社会の呼吸なのか。いい空気を吸っても、充満する
人々の吐息は異臭を放つ。現世は地獄の出口、極楽
の入口が、鑑主の持論だ。人が歩む道幅は、思って
いる以上に狭い。ガードレールもない。法治主義の
ルールに従って、粛々と歩み続けるしかない。人口
減少、少子化であっても、表通りは大混雑だ。信号
無視や、あおり運転が日常だ。警察官が笛を吹き、
注意をしてもお構いなし。そんな時、誰彼となく、
裏道や近道を探索してくる奴らが、こんな道を発見
した、と友人諸氏に連絡する。優秀な連中は迷う事
なく、意思決定し、赤信号も皆で渡れば怖くない、
と今では懐かしいギャクを、心中に響かせ、果敢に
裏街道を全力疾走だ。ヤッタゼ、ベイビー、これも
少々陳腐なフレーズだが、ベンツの中には、札束が
溢れかえり、数えるのさえ面倒な状況だ。そんな時
一台の白バイが、けたたましくサイレンを鳴らして
停車を求めてきた。何事かと、怪訝な表情を浮かべ
ウィンドーを下げると、実は、この先は通行止めで
危険であるために、本官が警告、摘発しているとの
言を発したのだ。どうすれば、いいんでしょうか。
さー、逆走を許可する事はできません。車を置いて
表通りまで歩いて、ヒッチハイクでもするしかない
でしょうか。車中には、大切な物があり、背中には
負いきれないんですが。一応確認しましょう。凄い
大金ですね。いくら在るんですか。10億円です。
若輩の本官では、本件の対処は、出来ませんので、
応援を求めます。緊急案件として、東京地検特捜部
から、テレビに出てくる木村拓也ばりの、ジーンズ
を掃き、ラフな恰好で気鋭の検事、そのイケメンが
輝く白バイのサイドカーに乗って現場へ、颯爽とご
到着。助手席の女性を見て、驚いた。最近、テレビ
でご活躍されている、国際政治学の先生ですよね。
そうですが、何か。いや、別に。運転手さん、免許
証を再呈示願います。ミスターMさんですね。先生
ご主人でしょうか。そうですが。何が問題ですか。
道路交通法違反に該当する可能性があり、他人所有
の土地を勝手に通行、侵犯しているので諸法に違反
していると思われます。一応逮捕して、取り調べる
必要があります。私は、全く関係ありませんから。
暫くすると、上空にヘリコプターが現れ、ご主人は
爆音の中、連行されてしまった。程なく、特別通行
許可のパトカーが、現場に到着し、本件大金と共に
先生を自宅まで送り返す事となった。車中、木村風
検事は、先生に尋ねた。なぜ、あんな道を選んだの
ですか。私は、一切知りません、との強弁だ。でも
あの道は行き止まりで大変危険です。知らない、と
言うより、知るべきだったのでは。まー、いいでし
ょう。お疲れ様、到着しました。六本木ヘルズに。