ハイブランドの色気
人を見て、色気の有る無しを感じる時がある。その
色気の正体とはいかなるものか。基本的な定義では
異性を引きつける性的な魅力とされる。本来、この
意味するところは、いわゆる[やらしさ]、つまり
加藤茶氏、お得意芸の[アンタも好きねー]の決め
ゼリフ。はたまた、悪友同志で、[お嫌いですか、
お好きです。]を口にするのは、酒場通りでのホロ
酔い散歩の合言葉。これらは、セクシャルな感情が
全てである。しかし、会社内で昇進や次期役員候補
を決める際に、[アイツは、随分色気がある。]と
議論される場面では、性事とは無関係である。この
場合は、口には出さぬとも、やる気満々を関係者に
感じ取らせる色気。[野心]と[私心]が複合する
無言の雄弁力であって、隠しきれない意欲が色気の
実質だ。さて、太平洋戦争から80年が経過した。
現在の日本では貧困や高齢化等の社会的問題は存在
しても、総じて日本国民は、各人がパターン化した
日常生活を送り、生きる苦労は、それぞれだが一応
幸福な暮らしを継続できている。協調精神を基本に
する安定的な共同生活の維持は、聖徳太子の教えに
従う和親合一の伝統的な生活態度である。日本国民
の特性は没個性の品格重視にあり、その集積である
国家像は[無印良品国家]と評せる。この象徴企業
がユニクロである。同社の商品は機能的かつ廉価で
現代日本にとって社会的に認知される制服である。
[制]の文字は、統制美の制であり、同一性が本質
的価値である。しかし、上記色気の観点から見ると
際立つ性的魅力はなく、自信家特有のキラキラ感も
乏しい。あくまでも無印良品である。そこで、人生
燃焼の気概を持つ、やらしい意欲的な野心家、即ち
セクシャルパーソンは、商品の機能性や高品質だけ
では満足できず、他人との差別化や自己顕示のため
ブランド商品の探究に努める。高級時計ロレックス
シャネル、グッチやルィヴィトン等のファッション
商品、ベンツ、ポルシェ等の高級車を求める人達の
欲求の根本はハイブランド商品が自発する存在感や
独特な色気との一体感にある。高級商品が生み出す
昂揚感は、市場世界のセクシャルパワーだ。希少な
ブランド商品は、当然に高価であるが、バリューは
プライスを打ち砕く。そして、魅力的商品の価値が
ありきたりの日常を超越させ、無限の時空間で自由
気儘に生きてみたいと思いつつ、それが叶わぬ夢と
諦める時に、ヴィトンやシャネルのバッグ等が確か
な慰めとなっている。本来的に商品は、日常の効用
に資する存在に過ぎない。しかし、社会が成熟化し
その機構が複雑化する状況の中、価値観が揺らぐ時
商品市場ではバリューとプライスの判定が、困難と
なってくる。ブランド商品は、今や、世界的な商品
価値の共通基準である。ユニクロは、どう挑むか。