『羅生門』抄録
『羅生門』抄録
(作詞)藤原晟芳
天災、飢饉、京都を襲い
朱雀大路の羅生門
荒れ果てて人影はなし
ある雨降りの夕刻に
くたびれ下人、姿を見せる
仕事失い、途方にくれて
石段座り、雨筋を見る
生きる迷いに答えなく
楼門前で思案にふける
命のあるじ、見捨てるや
飢え死に避けて盗人の道
選ぶ覚悟を決めかねる
夜が更けて寒さ身に沁み
楼の上へと登るなら
腐乱死体が異臭を放つ
鼻を覆って目を凝らす先
痩せた老婆が髪の毛ちぎる
激しい憎悪沸き起こり
非道のしわざ、問いただすれば
かつらに仕上げ売ると言う
うなずく男、嫌悪消え去り
罪の留め金はじけ飛ぶ
老婆の首を手荒につかみ
着物はぎ取り蹴り倒す
こころ狂いに違いなし
生きるためなら正義を問わぬ
老婆うめきて後を追えども
はしご駆け下り、闇に消ゆ
暗黒の夜に姿なく
男の行方、知れぬまま
[羅生門]
芥川龍之介 1915年作
生きるために手段を選ばぬ
人間のエゴイズムを羅生門
という劇的空間で展開させ
心中での正義と非道の葛藤
を描写する。原文より創作