ロシア-ウクライナ紛争私見(7)
憂国は、愛国の熱情か。プーチンはEUに攻められ
る前に、先手必勝策としてウクライナへの侵略行為
を開始した。2014年ロシアはウクライナの要衝
クリミアをロシア軍の監視下で行われた住民投票で
奪取できたため、躊躇なく自信満々にウクライナの
東部地域に攻め込んだ。そもそも大国ロシアの高慢
さはその領土の広大さに依拠する。ユーラシア大陸
の北部一帯を有する巨大国家、面積約1700万
平方キロm(以下单位省略)は、フランスが25個
ドイツが47個、日本が45個入る。この領有面積と
背後の攻撃国の不在がプーチンに有形無形の存在力
を付与する。しかし、領域の大きさが国家の豊かさ
を示すものではない。実際ロシア国土の6割が永久
凍士で、タイガ大森林地帯、ツンドラ地帯の存在を
考慮すれば、居住可能面積は僅か3割程度となる。
これは、オーストラリアの770万以下、インド
の330万の間にあり国土の世界順位は第7位と
なる。ちなみに、米国は980万、中国は960万、
米中は経済戦争と同様に互角の状況である。
大国ロシアの呼称が一般化されているが、ロシア国
の存立環境は誠に厳しい。ロシアの冬は一50度、
その寒さはウオッカなしではやり過ごせない、結果
その飲み過ぎで健康を害し、国民男性の平均寿命は
68歳で世界183ヵ国中、118位の短命国家で
ある。たとえプーチンが死しても何ら問題はない。
この冷えきったロシアが求めるのは陽光の大地だ。
いわゆる南下政策だ。手っ取り早く南に下るなら、
中国への侵攻作戦だ。中露国境は4300キロある。
間隙を狙うも、中国の守りは鉄壁だ。1969年、
ウスリー川のダマンスキー島内で両国が軍事衝突。
結果、ロシアは成長著しい中国を石油輸出国として
確保する実利を選択し、1991年等分方式で解決
した。以後、対中国への侵犯はない。南が無理なら
東か西か。西に対峙するのは欧州連合EUだ。27
カ国の政治経済連合の圧力は、日々ロシアに迫る。
共産主義思想が忘却される現況は、経済のソフト化
である。知財評価が世界基準となる現状で、ガスや
石油で国家存続を図る難しさは加速する。もはや、
国益保障はヨーロッパへのパイプラインと不凍港、
クリミアのセヴァストポリ港に依存するしかない。
プーチンが戦術核の使用を堂々と発言する背景には
人生終焉が近づく中、ロシア国家が将来的にはEU
に飲み込まれてしまうという憂国の情念が燃え盛り
黒海唯一の開放ゾーンであるクリミアを死守すべく
ウクライナへの侵攻を絶対視する事にある。青は藍
よりいでて藍より青し、憂国は愛国より優るのか。