赤鉛筆の芯は折れるのか
貨幣経済の探究は今日までの人類社会の歩みを読み
解く鍵になる。そもそも物々交換の問題点を解消す
べく貨幣制度が考えられたとするがフェリックス・
マーティンは、新貨幣論において人間社会では貨幣
制度の考案より先行して債権債務、即ち貸し借りの
活動が日常化されており、貨幣はそれらを明確化す
べく創出されたとし、メソポタミア文明のトークン
という粘土の固まりに生活上の取引が記録されてい
る、と言う。紀元前3500年の古代人は本能的に
契約活動を行っていた。よって人類は生来的に打算
的存在として地球上で命を繋いできたわけである。
今、この論を基に中国の今後について考えて見る。
まず、中国の現況だ。約960万平方キロm、世界
第4位で日本の約26倍、この大地に約14億人が
ひしめきあう。世界人口の6人に一人が中国人で、
その内、漢民族が92%を占め、55の少数民族が
併存する。さて、現在世界に約8億台の監視カメラ
がある。その半分以上が中国にありAIと連動する
監視カメラが24時間、3秒以内で14億の国民の
行動を監視可能と言われる。また、SNSの規制は
厳しくライン、ツイッター、グーグルなどは利用で
きず、政府批判等は専門監視員による消除が徹底さ
れる。中国政府とは中国共産党である。約9200
万人の党員が警察、学校、裁判所を始め役所、病院
やテレビ局に配置され、政府の指示、命令は即時に
伝達、指令、実行される。乱れなき指示系統こそ、
中華帝国の自律神経である。周近平国家主席は現代
の始皇帝と呼ぶに相応しい存在だ。ここで心理学者
マズローの欲求5段階説に目を向ける。人間の欲求
は、生理、安全、社会、承認、自己実現と高次上昇
していく。本理論は当然に社会の成熟化においても
通用する。かって中国人は皆一様に人民服を着て、
自転車に乗り北京広場の前を行き交っていた。この
見慣れた光景こそ貧しき中国の象徴であったはず。
それが2028年には米国を抜き世界一の経済大国
になると予想される。コピー大国、中国との批判が
ある。辛亥革命後に毛沢東はソビエトからマルクス
レーニン主義をコピーし現代の発展を基礎づけた。
ソ連から共産主義が消えたが、中国には2000年
を誇る儒教思想の基盤がその崩壊を回避させ、本来
水平型思想であるべき共産主義が独特の縦型に変容
された。修正共産主義社会だ。鉛筆型社会である。
先のトガッタ赤鉛筆だ。最近、14億の息づかいが
荒い。豊かさの獲得の次には自由な公開社会が欲し
い。華僑なる言葉が、中国人の打算能力を教える。
社会・共産主義と資本主義、この相矛盾する理念と
自己実現を望む力が赤鉛筆の芯を折る日が来るか。