青い地球とカブトムシ
1961年、ユーリ・ガガリーンは、世界初の字宙
飛行士としてボストーク1号に命を預け、地球から
飛び立ち宇宙に身を置いた。彼は帰還後に暗い静寂
空間の中で地球は青く輝いていた、と語った。後日
彼はロシア正教のモスクワ総主教アレクシー1世の
問いに神の姿は見えなかったと答えた。主教は自分
の胸に収めておく様に諭した。また、フルシチョフ
首相には神を見たと報告したが、同志よ、その事実
は誰にも言わない様に命じたと聞く。果して真実は
いかに。恐らく彼は実在としての神の姿を見る事は
できなかった。しかし、宇宙をつらぬく神秘の鼓動
を受け止めたのであろう。神を見ずとも、神の存在
を直感したはずである。つまり、ガガーリンの発言
に虚実はなかったと考える。彼は、高度400キロ
メートルあたりを飛行したとされるが、現存の国際
宇宙ステーションや多くの人口衛星も周回中とされ
る。また、宇宙空間は地上から100キロメートル
から始まり、空気は極めて薄く人類の生存が不可能
となり、真に神々の領域となる。さて、人類誕生は
700万年前と知る。神々の多くは、地球上の人間
の息吹を見つけた時に、オオーと喜びと感嘆の声を
上げて祝福し、慈しみの愛をこの星に降り注いだに
違いない。それは、私達が白い帽子を目深にかぶり
汗をふきつつ里山に分け入り、昆虫探しに熱中し、
陽が傾き始めた頃やっと大型のカブトムシを発見し
た時の感動と同様であったのであろう。神々は興味
深々に人々への慈愛と共に試練も与え生き抜く力を
授けた。現生人類は、ホモ・サピエンスと称され、
240万年前にアフリカに出現したらしい。同時期
にはネアンデルタール人や小柄なデニソワ人も共存
していたが、大脳新皮質の重量差、いわゆる脳みそ
の大きさが他種族より一段と大きく生存競争を勝ち
抜き今日まで世界史の主役を演じてきた。その勝因
に、言語使用の卓越さと火の使用があるとされる。
言葉を巧みに使って人間同志の協力関係を築き、火
を使用し猛獣からの威嚇や攻撃を避け、調理技術を
磨き、生活環境を改善する事が可能となった。また
アフリカを起点に、ユーラシア大堕を横断し、米国
東西アジアへ生存支配領域を拡大して、現存世界の
根本的基礎を構築した。今、神々は地球上の人類を
どの様に観察しているのであろうか。粗野で凶暴と
される神、ポセイドンはローマ帝国のコロッセオで
展開される各種闘争劇を鑑賞するがごとく暇つぶし
を楽しんでいるのか、一方でケンカは止めてと平和
の女神エイレーネーが涙を流しているのか。人知を
超える判断であるが、ゴルゴタの丘で説法し、処刑
されたキリストは死んだ甲斐がないと嘆いている。